クレイ・フォーサイトの罪と罰【罰編】
唐突ですが、10/20の驚纒動地@インテで本を出します。ブログ掲載済みの以下の記事を修正したものと、書き下ろし1本を加えた考察?本です。
↓こいつが修正版再録予定のブツ
で、その書き下ろし1本なのですが、本当は二編あるはずでした。でも片方だけで割と字数が食ったのと、自分の中で「こっち(本に入れる方)採用だな」と落ち着いたので、もう片側は破棄するつもりでした。
が、本命の話(スペース自体は小説で取ってるので、本命の話とはその小説本のことです)のために6回目を見にいったところ、
自分が捨てる方の考察のがマトモだなということに気づき、供養のためにここに書くことにしました。
クレイ・フォーサイトの罪と罰、の罰編をここで書きます。罪編は本にあります。
そういえばいつも断定口調?で記事を書いてますが、今日は自分のイベント宣伝から入ったせいか丁寧語になってますね。
あるいは今スマホで打って全く推敲せずこの記事を投稿せんとするライブ感で書いてるせいかもしれません。ライブ感なので自信がなくて丁寧語という。
どうかそのあたりはお気になさらずお読みいただけますと幸いです。
全てはクレイ・フォーサイトの「野望」をどう見るか
タイトルの通りです。又の名を、「クレイはバーニッシュになってからデウスを殺したのか、殺してからバーニッシュになったのか問題」です。
私はタイトルで罰編と銘打っている以上、この記事では「クレイはデウスを殺してからバーニッシュになった」前提で書いていきます。この前後関係は作中曖昧なので、これはどっちで読んでも良いと思ってます。で、逆の順序は本に入れる罪編です。
クレイがデウスを先に殺したなら、変な言い方ですがそもそもクレイはデウスを殺して彼の研究を奪い取る算段があったことになります。これは名誉欲しさなのか、研究者ではあっても救世主ではない(=人類を救わねばという意思があまりなく、ことの真実には興味があるが必ずしも人類贔屓ではなく、全ては自然の成り行きに任せても仕方ないというある種の諦観を持つ)博士を「ダメだこりゃ」と判断し「馬鹿もハサミも使ってなんぼ」という、強いて言いますが、傲慢な使命感に由来していたのかは考える余地があります。
が、彼の深層心理の動機はどうあれ、クレイの思想の根っこに「<自分が>人類を救いたい」というマインドがあった。
ファーストガンダムの例えを急に出しますが、このクレイは土壇場の土壇場でギレンを殺した、とてもキシリア的な部分を持っていると思います。
学級委員をやりたいから学級委員をやる。生徒会長になりたいから生徒会長になる。生徒会長になって具体的に行う施策のビジョンはあったけどツールが思いつかなかったのか、はたまた施策すら思いつかなかったのか、とにかく自分の(浅い)ビジョンにデウスがいるのは邪魔だから殺す。でもデウスの成果物は必要だから取る。
ここまで書いたらなんとなく察していただけそうですが、このクレイが執着しているのはデウスですね。クレイはデウスになりたかった。でも自分はデウスほどの成果は出せないし、自分はデウスほどの成果を出したら大々的に表に出すべきだと思っているのに、当のデウスは「この研究は未完成だし表に出せない」と言う。見せびらかしたい自分と慎ましい諦観を宿すデウス。
クレイになりたいデウスは、まぁデウスを殺して彼の成果を横取り、でもデウスと違う方法で成功を収めたいですよね。
確かに研究というカテゴリではデウスに負けた。でも。でもそれをどう使うか?という肝心な部分では僕が上手だ。僕が勝つ。僕の「使い方」で僕は人類を救ってあなたに勝つ!
これが、クレイの動機なんだと思うのです。このクレイは動機が不純ですが、それでもマジで人類を救う気はあった、と思ってます。(罪編のクレイは、救う気は無かったという話です)
計画通り。全部計画通りでした。誰にもバレず、デウスを殺した。彼の研究も奪えた。これを表に出して、僕がヒーローだ。全部計画通りだ。
でもまぁ、神様もそんなに甘くない。クレイに罰が下ります。
その罰の名前と形は、ガロ・ティモスでした。
罪人クレイの足枷・ガロはクレイが信用差で絶対勝てない相手
我慢比べで勝てなかったクレイ
でも、殺し切れるビジョン、あります?一発で仕留められなかったら?逃げられたら?逃げられたらまだマシかも。こっちに飛んできたら?どうします?そこまで過って、しかも過ったということはあなたには一発で仕留める自信はないってことで、そんなあなたはゴキブリ殺せます?
クレイはね、殺せませんでした。勝手に死んでくれ、どっか行ってくれ、そうやって怒って震えて怯えながら生きてきました。ガロを殺しきる自信がないクレイは、このまま怯えてガロが勝手に死ぬのを我慢するしか、勝ち筋ないんです。
が、最後には爆発した。なんでゴキブリに私が恐れを為さねばならんのだ?!なんでゴキブリに私の計画を妨げられねばならんのだ?!とブチギレて正体を明かして丸めた新聞紙と殺虫剤両手に暴れまわりました。ふざけるなと。ゴキブリ風情がこのクレイ・フォーサイトを邪魔するなと。
旦那と呼ぶなと。圧倒的なあるはずのない敵意をガロに見せてしまいました。我慢しきれなかった。ガロを一発で仕留めることができないなら、一生我慢するしか勝ち筋なかったのに。
でも、ガロ・ティモスはクレイ・フォーサイトのゴキブリではなく罰なので、それを忘れてキレたクレイには勝てるはずもなく、負けるのでした。
クレイは、ガロに真実がバレないように細心の注意を払って我慢してたと思いますが、まあガロがリオと接触してしまったのでどうしようもなかった。しかも、クレイがガロを半ば手懐けている気でいたのに、全然そんなことなかった。勲章まであげたのに、ガロはバーニッシュの親玉の言うことを信じて真偽のほどを問いに来ました。この時のクレイの絶望ったらなかったでしょうね。自分の我慢なんか関係なかった。勝手にバレた。それはブチ切れてもまあ、仕方ないのかなとは思うのですが。
ただまあ、クレイにはブチ切れていい権利ないのですけど。
クレイは我慢ができないんです。
天才デウスに追いつけない自分の状態が我慢ができないから、身の程わきまえずデウス博士を殺して成り代わろうとする。プロメア覚醒という事故みたいな現象で自分の人生が台無しになるのが我慢できないから、自首しないで英雄のふりをする。何がまずいって、プロメア覚醒したのはデウスを殺した罰ですから、これは受け入れて償わなければならないのに、クレイはNOと拒否したわけです。払いませんと。それは利子がとんでもないことになりますよね。
我慢がきかないクレイがここまで積み上げてきた借金は天にも登ります。罰がすごい。懲役がとんでもない年数になっている。これ、負けたらどうなるのでしょう。これ、有罪だって認めてしまったらどうなるのでしょう。クレイは、こんな自分の状況我慢して知らないふりができるのでしょうか?我慢できないでしょうね。
我慢できないので、最後、踏み倒しました。自分がガロの家を焼きました、ガロのことが目障りでした、ガロは消えてほしいと思っていました。暴露して、ガロを殺そうとした。積み上げてきた借金、とんでもない懲役、クレイ・フォーサイトの罰、それを自分で壊してなかったことにし、新天地・オメガケンタウリへの逃亡を図った。我慢できないから。
それは、勝てないよなあ、って。
またも考えるクレガロの未来
これだけクレイが酷いことやってのけたと書いておいて、これで私はクレイとガロにくっついて欲しいというのですから一番度し難いのは私なのでしょうね。
何と無くなんですけど、ガロはみんなには愛想良くて快活なバカでも、クレイにだけは冷たかったり、優しくできなかったり、嫌味言ったりみたいな、そういう2人を見れたらなと思うのです。
例えば映画後、なんらかの理由で一時的に牢から出てきてレスキューにクレイが協力せざるを得ないみたいなことになったとき、ガロだけは全然クレイと口利かない。ガロが口利かないからクレイも口利けない。あれだけガロのことを嫌っていたクレイですが、もう手の内全部バラした後なので彼にとってのガロは罰でもゴキブリでもない。このクレイが怖がっていたのは、実は自分が虎の威を借る狐でミイラになったミイラ取りとバレることです。もうバレてたら、今更なので。
でも、ガロは傷ついてます。あったものが全部嘘。飛び込んだのは親殺しの胸の中。ずっと嫌われていた過去。どうやってクレイのこと見たらいいかわかりません。ここでね、ここでもガロの痩せ我慢が出て、よぉクレイ!ってなったらクレガロ は、ないです。38億分の1、決定。(この謎表現は、本か過去記事見て貰えばわかります。)
でも、ガロがクレイを無視したら。悪態吐いたら。どのツラ下げて来たんだ、と怒ったら。そのガロは、間違いなくクレイを見てます。クレイだけがガロの痩せ我慢の魔法を解いてしまう。1分の1です。ガロの痩せ我慢の魔法を解けるのは、クレイだけ。
で、その痩せ我慢の魔法を解いて優越感に浸ってるクレイでは、これもまたクレガロ は、ないです。ガロの悪感情引き出してせせら笑うクレイにとってのガロも、これまた38億分の1。クレイは発言の端々から人を見下してますから、自分のことを苦しめてたガロが今苦しんでるとしたらそれはさぞ爽快です。それが爽快なのはガロが苦しんでいるからではありません。自分のことを苦しめてたやつだからです。自分のことを苦しめたやつの椅子に座っている人間が苦しんでいるのが爽快で、その椅子に座るやつが苦しめば、そこに座ったのが誰であってもいいんです。38億総人類、誰でもそこに座ったなら苦しめ。私を苦しめた罰を今度はお前が受けろ。
なので、もしガロからの冷たい態度を受けてね、痩せ我慢の氷の鎧を溶いたのにその中から出てきたガロが傷ついた手負いの獣みたいに自分に牙を向いて警戒して怒りと悲しみの入り混じる目で睨んできた時にね、悲しくて辛いと思えたなら、そりゃクレガロ ですね。1分の1。どの面下げてそんな感情抱いてるんだ?!そんなことはわかってる。どの面下げてそんなこと言えばいいんだ?!わからない。多分どの面でも無理。氷の分厚い仮面をこさえても、内からドロドロ溶けていく。いっそこんな感情捨てられたらいい。でも無理だ。
だって好きだから。
確かにつけた傷と、確かにつけられた傷。近づきたいけど近づけない。近づけたくないのに近づけたい。
これもまた、クレガロ なんだよなぁ、って思うのです、私。